与えられた理念を、育てるということ

経営理念の重要性が⾼まっている
最近、「経営理念の浸透」に関するプロジェクトのご依頼をいただく機会が多くなっています。不確実性が⾼く、変化の⼤きな時代の中で、理念を単なるお飾りではなく、組織の中⼼に据えようとする企業が確実に増えています。
経営理念は、経営の根幹です。
しかし、どれほど⽴派な⾔葉であっても、社員⼀⼈ひとりにとって実感できるものでなければ、⼼からのつながりや所有感は⽣まれにくいものです。理念の⾔葉をただ「覚える」だけでは、⼈は動きません。
理念に込められた想いや意図を受け取り、⾃分⾃⾝の仕事や⽇々の⾏動に反映されたときにはじめて、その⼒が⽣きてきます。
理念を「⾃分ごと」にするには
では、どうすれば理念が「⾃分ごと」になるのでしょうか。
ひとつの鍵は、理念の背景にある経営者の想いに触れることです。
理念の⾔葉だけをなぞっても理解は表⾯的なものにとどまります。理念が⽣まれた経緯や経営者が込めた願い。その背景に⽿を傾けることで、理念との距離は確実に縮まります。
さらに、経営者⾃⾝の⾔葉が持つ⼒にも注⽬する必要があります。
誰よりも理念を体現しようとする経営者の姿勢から紡がれる⾔葉は、想像以上に深く⼈の⼼に届きます。たとえ⼀⾔であっても、本気がにじむ⾔葉には⼈を動かす⼒があります。
ある企業の理念浸透プロジェクトでは、社⻑⾃らが⽣い⽴ちや仕事を選んだ背景、理念を創る際に⼤切にしたことを⾃然体で語りました。理念への想いが直接伝わる中で、時間の経過とともにメンバーたちの表情や姿勢が変わり、⾃⾝の仕事と理念を結
びつけ、その価値を再確認する様⼦が⾒て取れました。
理念を育てるプロセスを⼤切に
理念の浸透とは、社員に経営理念を無理に押しつけることではありません。社員⼀⼈ひとりが、理念を⾃分の⼈⽣や仕事にどう重ね合わせるかを考え、⾃分⾃⾝の⾔葉で語り、実践へとつなげていく。この積み重ねが、本当の意味での「理念浸透」につながります。経営理念は、経営者だけのものではなく、組織に集う⼀⼈ひとりの灯台となり、迷ったときに⽴ち返る原点となる存在です。
だからこそ、経営理念を「与えられたもの」として受け取るだけでなく、⾃分の中で育てていく視点が、これからますます求められていくと考えます。
最後に
理念は、与えられた瞬間に完成する訳ではありません。
⼼に留め、問い直し、⾏動を重ねる中で、静かに育っていきます。
理念を育てる営みは、やがて組織全体の息吹となり、広がっていくことでしょう。
あなたは、どんな想いを込めて、理念を育てていきますか︖