従業員の行動の中に理念を見る
現会長から、「トップダウンで経営してきた会社をチームで経営する会社にしてほしい」「従業員にとってやりがいのある会社にしてほしい」などの要望を受けて認知症高齢者グループホームの社長に就任したN社長は、まず経営理念を確立することを目指して経営をスタートしました。
そして今月のエグゼクティブコーチングの冒頭、直近1ヶ月を振り返って「これまで頑張りすぎていた。自分には柔軟性がなかった。こうすべきだ!とこだわりすぎていた。バランスが必要だった」と口にしました。
経営陣と現場の間にある溝
経営を引き継いでから、経営陣とのコミュニケーション(現会長、専務(会長夫人)、常務(会長のご子息))を重ねること、グループホームの従業員から現場の声を聴くこと、グループホームの経営について学ぶことを中心に活動してきて、もっとも気になったことは、経営に対する従業員からの評判が悪いだそうです。
N社長からすると経営陣は、「従業員の話を受け取らずに、評価、判断で反応している」ように見えると。そして経営陣は、「従業員は当社で働きたくているのではなく、ほかで働くところがないから働いているのではないか」と従業員を見ていると。
応募者の一言が気づかせた「理念の体現」
そんなある日、施設長経験者採用面接で、N社長は意外な言葉を耳にします。
「なぜ、このグループホームで働きたいのか」を応募者に聞いたところ、「ここは私が将来入りたい施設だからです」と答えたそうです。
N社長曰く、特別養護老人ホームは入居者をお客様扱いするのに対して、当社は「その人らしい生活をサポートし、できるだけ自立に向けて支援している」とのことです。
「介護用おむつに頼らずに自分でトイレに行けるように、歩行が困難でトイレまで時間がかかる入居者に対してもそっと寄り添い、食事が終わった食器類は入居者自ら片付けるように、見守るサポートをしているんですよね。現会長のDNAが従業員に受け継がれ、従業員全員が見守りサポートを行っているんですよ」
「見守る勇気」──理念が行動に宿るとき
応募者からの返答を聞いて、会社が行っているサービスを振り返ってみて思ったことは何かをN社長に聞きました。
「やはり、うれしかったですね。そして、歯がゆかったです。当社の強みを打ち出せていないなと思いました。当社が大切にしていることは『見守る勇気です』と言いたいですね。当社は『その人らしい生活を長くサポートしています』と打ち出したいですね。」
「なんか言いながら、心がすうっと軽くなりました!」
エグゼクティブコーチングで言葉にしたことを現会長に話してみること、毎月出している従業員への社長メッセージで今回のことを書いてみることを約束して、N社長は出発していきました。
