静かな退職を選択する人たちの増加

静かな退職(quiet quitting)」とは、近年注目されるようになった職場での行動や考え方を指す言葉です。これは、正式に退職するわけではないけれど、与えられた職務以上のことはやらないという働き方や姿勢を意味します。
「静かな退職」はZ世代・ミレニアル世代にも広がる現象に
欧米では階級意識や契約を重視するなどの歴史、社会的背景の違いがあり、トップエリートを除くと、静かな退職状態がスタンダードであるとも言われ、欧米における働きかたの情報を耳にしたり、旅行時にはサービスの質の違いを感じたりした経験をお持ちの方も多いかと思います。
日本のサービス業においては昨今人手不足が深刻なため、サービスの質の低下を感じることはありますが、そのことが静かな退職と関係するかどうかは定かではありませんが、多くの企業の中で日本でも静かな退職現象が昨今起こってきていると言われています。
以前から40代後半から~50代には静かな退職の傾向が見受けられることはあったかと思いますが、最近ではZ世代、ミレニアム世代に静かな退職の傾向が見受けられるようになっているようです。
確かに、Z世代を部下に持つ管理職からは「ワークライフバランスを重視している」「仕事が残っていても帰宅する」「責任を引き受けたがらない」というような言葉を聞かない日はありません。静かな退職傾向を見せる人たちは、決して仕事をしていないわけではありませんが、契約上の義務はきちんと果たすものの、それ以上はやらないという明確に線引きをする様子が見受けられるようです。
「頑張ることの意味」が揺らぐ時代背景
その背景には何があるのでしょうか。
個人的には「ブラック企業」という言葉は日本人の働きかたに大きな影響を与えたのではないかと考えています。
また、VUCAという言葉に代表されるように、先行きが見えにくい状態の中で人々が抱える不安を抱えながら生きる人が増え、「努力が必ずしも報われるかどうかわからないならばそこまで頑張らなくても」などという考えも生まれたのではとも考えます。
ミレニアム世代に関しては、年長者とZ世代の価値観の狭間に位置し、入社時はまだ「忙しければ土日出勤も」という空気感が社内にあり、その後「女性活躍」「働きかた改革」などという働きかたの変化の波にさらされ、頑張ることの意味を見失った人も多くいるのではないでしょうか。
求められるのは「時代に合ったマネジメント」の再構築
静かな退職を選択する理由は数知れずあるでしょうが、欧米とは働く仕組み自体が違う日本において、更なる難しさは欧米ほど表立って表明することがなく、それどころか表面的には従う様子を見せることも多いことです。
上司から見ると熱意が感じられないことから「やる気がない人」とたったひとつのカテゴリーで捉えてしまうことも起こりがちです。それゆえ対話が大切という他の課題と同じ解決方法がここでも導き出されるのですが、この問題に関しては対話の前に、管理職世代が若手の頃に無意識のうちに持っていた会社に対する愛着や、上を目指すことが当然というような前提は排除してマネジメントを行う必要が出てきたことは確かでしょう。
環境変化に対して事業内容自体を見直すことは長らく会社全体で取り組まれていますが、マネジメント、リーダーシップ、人材育成に関してもいよいよ自分自身の成功体験ではなく、本格的なアップデートを本気で取り組まねばならない時が目の前に迫ってきているようです。