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1970年から2025年までの『お金』にまつわる変化

その他(プロジェクト・書評など)

2025.12.16

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1970年の大阪万博のテーマは「人類の進歩と調和」でした。2025年の大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」です。おかげさまで両方の万国博覧会を現地で体験することができました。この55年間は私自身の人生の大半を占める期間ですが、世界はどのように変化してきたでしょうか。

1970年は日本の人口が1億人を突破した年です。出生数は1,934千人。1968年にGDP世界2位になりました。日本には勢いがありました。
2024年の出生数は688千人。人口は1億2,380万人。GDPは世界4位。2025年はインドと入れ替わりGDP世界5位になることがほぼ確実です。我が国では急激に少子高齢化が進み、成長よりも成熟への道を探らなくてはいけないのかもしれません。

世界に目を向けると、「お金」に関することの変化がジェットコースターのようにすごいことが分かります。

1ドル=360円の時代から変動相場制への移行

1970年の大阪万博のときの為替レートは、1ドル=360円でした。翌年8月にアメリカのニクソン大統領が突然、金とドルの交換停止を発表しました。いわゆる「ニクソン・ショック」です。それまでは第二次世界大戦後に構築されたブレトンウッズ体制により、各国の通貨は米ドルと固定相場で結ばれ、なおかつ米ドルは金と1オンス=35ドルの固定レートで交換可能でした。しかしアメリカの一方的な発表でブレトンウッズ体制は崩壊したのです。


その年の12月、主要国がワシントンDCのスミソニアン博物館に集まり、通貨調整を話し合い、「スミソニアン合意」に至ります。そして1ドル=308円という急激な円高を体験することになり、輸出産業に大きな影響を与えることになりました。


しかし、この新しい固定相場制はすぐに限界を迎え、1973年、主要国は固定相場制の維持は困難だと判断して、変動相場制へと移行しました。


1990年代のバブル崩壊

1980年代には米国のドルを基軸通貨とする自由貿易体制下で日本や当時の西ドイツが輸出大国として台頭しました。製造業の空洞化が進む米国の労働者が日本車をハンマーで叩き壊す「ジャパン・バッシング」のパフォーマンスをテレビで見たのはこの頃です。米国は貿易赤字の急拡大と財政赤字が膨らみ、保護主義的な政策に切り替えつつありました。


そういう背景の中で、1985年9月に日本を含む主要5か国がプラザホテルに集まり、ドル高是正の協調介入を決めた「プラザ合意」により変動相場制へと移行し、これ以降の為替レートは市場で決定される仕組みになりました。こうして政府の介入と米ドルの供給量調整によって為替相場が安定し、世界経済は米国の成長に牽引されました。そして米ドルは国際通貨体制の中心的役割を担い、米国債やドル建て資産は「安全資産」として世界中の中央銀行や投資家に広く受け入れられたのです。


一方で円相場は1ドル=230円台から半年で180円へと急伸しました。円高恐怖症に陥った政府と日銀は金融緩和と公共事業を必要以上に続け、これがバブルの土壌を生むことになったのです。やがて日銀はインフレを抑制するために1989年末から段階的に金利を引き上げました。これがバブル経済をはじけさせるきっかけとなりました。「失われた30年」を経て、いまだに政府による「デフレ脱却宣言」には至っていません。


採掘された「金」は20万トン

最近、この55年間の変化を示す興味深いグラフを見ました。それは各国中央銀行が保有する金の量の変化を示すものでした。1970年時点で中銀が保有する金は3.7万トン超でした。その後、主要通貨は固定相場制から変動相場制へと移行し、金の役割は大きく後退しました。2009年には2.9万トンほどに落ち込み、その後は急速に増えて、2024年、金はついにユーロを抜いて、米ドルに次ぐ第2の準備資産になりました。2025年9月末現在で過去最高水準である3.8万トンに迫っています。これまでに人類が採掘した金は約20万トンですが、これはオリンピック公式競技用プール4杯分に過ぎません。そして世界の金の約20%は中央銀行とIMF(国際通貨基金)が保有しています。


因みに2025年7月の金保有量トップはアメリカで8,133トン。2位は3,350トンのドイツ。ロシアは2,330トンで5位。中国は2,300トンで6位。日本は9位で845トンです。前年比でみると中国、インド、トルコ、ポーランド、カザフスタンが大きく伸びています。なぜ今、各国中銀は金の保有量を増やしているのでしょうか。


世界の中央銀行は「分散投資」を目的としてだけではなく、「地政学的リスクに対するヘッジ」を目的として金を保有しています。また中央銀行は「非売却・長期保有」の姿勢を強めており、これが金価格の下値が支えられる要因ともなり、むしろ上昇圧力が継続する市場構造が形成されていると判断できます。9月末には金1オンス=3,800ドルを突破しました。1970年と比較すると108倍に達したのです。


世界の通貨危機が来る

1816年に「金本位制」が英国で確立し、1944年のブレトンウッズ体制で「金・ドル本位制」へと移り、1971年のニクソン・ショックを経て、米ドルが基軸通貨の役目を果たす「ドル本位制」になりました。世界はアメリカを信頼し、米ドルに依存しました。しかし今、その光景は一変しつつあります。ドルへの不信、アメリカ政府への不安に世界の中銀が背を向けているのです。


中央銀行による金の保有が増えている背景には、米ドルを基軸通貨とする秩序が続かないという不安があります。特にBRICS諸国やインドを中心とするグローバルサウス諸国が金の保有を増やしています。これはアメリカの支配下には入らないという意思の表明ではないでしょうか。今さら世界が「金本位制」に戻ることはありえませんが、金は単なるインフレヘッジや安全資産という枠を超えて、各国の主権の維持、政治的リスクへの備えとしての位置づけがされています。これは米ドルを基軸通貨とする国際通貨体制が崩れていくことを暗示しています。ドルに代替する次の通貨が見えないことが、消去法として金の保有に向かわせているのです。


このような世界の変化の中で模索が続きます。個人はどのように資産防衛をするのか。企業はどのように未来の戦略を準備するのか。そして日本政府はアメリカ追随姿勢からの脱却を図らなければならないと思います。


筆者

田近 秀敏

田近 秀敏 筆者プロフィール

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