リスキリングと存在意義の関係性
独立行政法人の労働政策研究・研修機構が、昨年10月から11月にかけて全国の企業で働く男女1万人を対象に、インターネットを通じてリスキリング(学び直し)について調査をした結果が発表されていた。仕事に関わる自己啓発を行ったと答えた人は14.9%とのこと。
また、勤務先の業務命令で通常の仕事を離れて、教育訓練や研修を受けたという人も全体の13.7%だった。2020年代のその他調査(リクルートワークス研究所、経済産業省など)では、働く人の 4割前後が何らかの形で自己啓発に取り組んでいるとされていた。
自己啓発を阻む要因
今回の独行政法人の調査では「自己啓発を行わなかった」と答えた人に理由を複数回答で尋ねたところ、「仕事が忙しくて時間が取れない」が32.8%と最多で、次いで「自己啓発を行っても会社で評価されない」が26.1%、「費用を負担する余裕がない」が21.5%などとなり、リスキリングをおこなわなかった背景として労働政策研究・研修機構は「人手不足のなか企業や労働者に時間がなく人材育成や自己啓発の環境が整ってないことが考えられる。人への投資は企業の成長にもプラスであり、企業による労働者への支援が重要だ」としています。
確かに毎日時間に追われる感覚がありリスキリングのために時間が取れなかったということは、大きな理由のひとつではあるが、時間が取れない、取らなかった背景そのものにも焦点を当てる必要があるのではと感じた。
目的が見えにくい学び直し
何かを始めた方が良いと考えている人は多いが、そもそも各人にとってのリスキリングの目的は何なのかが明確でない人が一定数存在するのではないだろうか。
そのために目標も見えにくく、目の前には緊急で重要に見える業務が山積みで、目的が明確でないことに時間を割けるほど、物理的にも精神的にも余裕はないという状態が想像できる。
では、リスキリングの目的を明確にするためには、何が必要だろうか。パーパス経営と言われ企業が存在意義を考え、その存在意義を軸に経営を行うように、働く私たち一人ひとりも「私は何者なのか、何をなす人なのか」を考えないことには、何を学ぶのかも明確になりようにもないはずである。
また、自分自身の存在意義を考えることは自律的に生き、働くことが求められている今の時代にこそ考えるべきことであり、そのためにリスキリングも視野に入れるというのが本来の流れであろう。
「お金」「生活」の次にある存在意義
また、その存在意義がどの方向を向いているのかも重要なポイントである。
存在意義そのものに対する問いではないが、研修内で「あなたは何のために働いていますか?」と問うと、「お金」「生活」との回答が大半である。確かに金銭は大事であり、パラサイトではなく物理的にも精神的にも自立することは重要であるが、それだけではないはずである。
「お金の次は?」と問うと、回答にかなり時間がかかり考え込む人が多い。指示された仕事を真面目におこなうことは大切ではあるが、そのこと自体が自分の存在意義になっているのではないかと思ってしまう瞬間であり、それぞれの中に存在する何かが顕在化されていない様子を感じる。
最初の答えである金銭という自分へ向かう矢印や他者から与えられる物だけでなく、無意識のうちに持っている自分自身を超えた外側への貢献意識を顕在化しすることが、自分自身の生きる道を自ら見出し、リスキリングを継続的に推し進める原動力となるはずである。
