始末をつける
誰もが人生の終わりを迎えるように、会社の終結もいつか直面する大きな節目として中小零細企業のオーナー経営者は自らの選択肢の中に入れておくべきでしょう。
会社の始末のつけ方は、事業の責任を果たし、社会的な信頼を保ちながら終結させるために不可欠なプロセスです。また経営者としての責任を果たす最終段階です。
一方、個人のエンディングノートは、自分自身の想いを形にし、遺された方々へ安心をもたらすものです。
顧問税理士の死
最近、私が絶大なる信頼を置いていた税理士が亡くなりました。80 歳でした。
逝かれる 2日前にご自宅の療養ベッドで過ごされていた税理士を訪ねました。腕や脚の筋肉は細くなり、聞き取りにくいほど小さな声でしたが、言葉は明快で、「納税者を守る」という志をもってクライアントの幸せのために努力してきた人生を語ってくれました。
私はこの税理士を色々と困らせてきたかも知れません。こちらから多くの提案をし、たくさん議論をしました。先生を最後に困らせたのは昨年、私が松本市に設立した2つの小さな会社を 10 年以内に解散清算させる構想を先生に話したときでしょうか。
「先生、会社は売るか、買って大きくするか、承継するか、解散するか。そうじゃないと倒産することになります。後継者を作るのが難しいわが社は余力を残して解散しますから、適切なやり方を考えてください」とお伝えしました。
「そんなことを 10 年も前から考えている経営者はいねえよ。大したもんだ。まあ、ゆっくり、じっくり考えるってもんじゃねえかな」と困った表情で返されましたが、結果的に、「田近氏の考えた通りにやってみるかい」と先生は頭を掻きながら承諾してくれました。
平成 14 年から私の相談相手になっていただいた顧問税理士がいなくなって、私はちょっと困っています。それでも自分の構想に従って、計画通りに、慎重に進めていこうと思っているところです。
エンディングノート
私の親は全く資産に関する書類を残してくれなかったので、実家と家業の後継者である私の弟はどこから手を付ければよいのかが分からず、しばらく途方に暮れていました。見ていて、かわいそうでした。
私の顧問税理士は自分の全資産を明らかにして、奥様と二人の子供たちに隠すことなく伝えてきたと仰っていました。私もかくありたいと思いましたので、数年前から子供たちが帰省して全員揃うと、家族会議を開いて、資産の概要と相続のプランについては概要を伝えてきました。
会社は事業内容を変えて承継することも可能なので、意志ある子供には私の会社を譲ろうという計画も伝え、少しずつ経営感覚を磨くことを意図して、経済環境の変化に関する話も機会あるごとにしています。
また私の子供たちの世界で起きている情報も私には刺激的です。 それでも全容を整理して文面に残すということまではしませんでした。
「まだ現役だし、そんな年ではない。まだまだ十分な時間がある」というのが先延ばしの理由です。
最近、「エンディングノート」なるものを取り寄せました。その中に書かれていた解説が役に立ちました。しかし自分が書く内容の多さに辟易しましたし、「数字に関するものは毎年更新しなければいけないなあ」と文句も言いたくなります。
でも、これは家族のためにもなるでしょうが、自分自身を振り返るためにも大事なプロセスだと思い、年内には一旦完成させようと誓ったところです。
まとめ
エンディングノートや事業の整理を通して、自らの意思と責任を明確にし、次の世代や関係者への思いやりを形にすることができます。
個人のエンディングノートは、人生の総仕上げとしての意味を持ち、会社の始末は社会的責任の完遂を示します。それぞれが自分自身と大切な人々のために、誠実に向き合うことが、穏やかな未来へとつながるのです。
私の茶道の先生がかつて青年時代の私を諭すように言ってくれた「始末をつけなさい」という言葉を思い出します。
