雨が降ったら傘をさす
いま、『実践経営哲学』(松下幸之助著:PHP研究所)という本を手にしています。この本の中で、松下幸之助氏は経営の秘訣を「天地自然の理法に従って仕事をする。たとえていうならば雨が降ったら傘をさす」と述べています。当たり前のことを当たり前にやることだと言っていますが、経営においてはそれが難しいとも述べています。雨が降ったら傘をさす経営とはどのような経営なのでしょうか。
「雨が降ったら傘をさす」という言葉を目にしながら、もうひとつ故野村克也監督の座右の銘として知られる「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」という言葉を思い出しました。
先日行ったある会社の一枚岩会議Ⓡでは、今期の売上予測が目標未達である理由を営業部長が「あれほど当てが外れるとは思わなかった」「来期以降の売り上げになります」というコメントをしていました。私もかつて営業社員時代、何度となく「当てが外れた」というような理由をつけて上司に報告していましたので、営業部長の思いはわかりました。そして「負けに不思議の負けなし」に照らし合わせれば「どれだけ用意周到に準備したか?」が問われていると思います。
営業部長のコメントは正当な理由が述べられていると思いますが、本当の理由は述べられていないとも思いました。それはその会社の社長の言葉の中にありました。「今期の売上目標の達成に、自分がどれだけ本気だったか?を振り返っています」と。
北中米ワールドカップで我が日本代表はベスト32でブラジルと戦い、敗れています。試合後のインタビューで堂安律選手は絞り出すように「力不足でした」と答えています。
彼らは「不思議の勝ち」を目指していたのでしょうか?そうではないでしょう。個々の選手は4年間で能力レベルを上げていますし、チームの力は親善試合でワールドカップ優勝国に勝つほどに洗練されてきました、本当にワールドカップで優勝するために用意周到に準備をして臨みました。本気でした。あらゆる手を打ちました。そして敗れました。力不足だということがワールドカップという本番でやってみてわかりました。
一貫性のサイクルにしたがえば、誰のために何のためにやるのかという目的を定め、やり続けた結果として共に創る未来像のビジョンを決め、ビジョン実現にどれだけ近づいたかがわかる目標を設定します。目的、ビジョン、目標を達成するための戦略・計画を立てて、一貫した行動を取っていきます。そしてやってみて振り返る。振り返って学ぶ。
サッカーというスポーツは「ミスが多い」スポーツです。ほかの球技もそうかもしれません。得点の少ないサッカーは特にそうです。だからこそ、得点が入るいくつかの成功のつながりを目指して行います。あきらめることなく、こうやったらうまくいくのではという方法をやり続けます。選手たちの熱意や発想、好奇心は果てることはないのです。
我が日本代表はワールドカップ優勝に向けて4年間、力をつけていくことでしょう。
雨が降ったら傘をさす。
負けに不思議の負けなし。
やってみたからこそ、そこから振り返って学ぶ。
用意周到に準備しているかと同時に、どれだけ達成に本気であるかを問う。
目的・ビジョンの実現に向かって成功するまでやり続ける。
「ひと言でいえば、素直な心はその人を正しく、強く、聡明にするのである。…経営においても然りである。」『実践経営哲学』(松下幸之助著:PHP研究所)