人の振る舞いと組織の構造
石川県小松市にあるコマニー株式会社は、「間づくり」の会社です。テレビ東京の「カンブリア宮殿」でも特集された会社なので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。
コマニーは、長年パーティションをつくってきた会社ですが、現在は自分たちを「間づくりカンパニー」と呼んでいます。
パーティションをつくる「間仕切りメーカー」から、「間づくりカンパニー」へ。
「カンブリア宮殿」にも出演されたコマニーの塚本直之氏から、以前、こんな話を聴きました。
友人と数人で世間話をしながら歩いていると想像してみてください。
歩いているうちに図書館に着きました。
図書館に入ったらどうするでしょうか。
それまでしていた話をやめ、静かにそこにいることでしょう。会話は必要最低限になり、それぞれが興味のある本を探して読むかもしれません。
その後、高級レストランに行ったらどうでしょう。
少し背筋を伸ばして歩くかもしれません。いつもとは少し違う言葉遣いになるかもしれません。
人そのものが変わったわけではありません。
「間」が変わったのです。
そして、間が変わると、人の意識や振る舞いが変わる。
この話を、私はたいへん興味深く聴きました。
それまで自分の中にありながら、うまく言葉にできなかったことを言語化してもらったように感じたからです。
組織も同じではないでしょうか。
そこで働く人たちは、その組織がつくり出している「間」の中で働いています。
そして、知らず知らずのうちに、その「間」に合わせた振る舞いをしています。
だとしたら、社員の振る舞いを変えようとするだけでなく、その振る舞いを生み出している組織の構造に目を向ける必要があるのではないでしょうか。
ところが、自分たちの組織の構造を見ることは、簡単ではありません。
水の中を泳いでいる魚は、自分が水の中にいることになかなか気づきません。
水の外から見るからこそ、そこに水があることがわかります。
組織も同じです。
私が数多くの組織に外から関わる中で、何度も目にしてきた構造があります。
私はそれを、「一生懸命受け身」の構造と呼んでいます。
① 上司から指示が出る
② 期待以上の成果を出そうとする。少なくとも指示通りにやろうとする
③ 結果が出ることもあれば、出ないこともある
④ 結果が出れば評価され、出なければ評価が下がる
⑤ ますます指示通りにやろうとする
⑥ そこに、また指示が出る
誰かが怠けているわけではありません。
上司は、成果を出そうとして指示を出しています。
部下も、その期待に応えようと一生懸命に取り組んでいます。
ところが、このサイクルを繰り返しているうちに、
「上から言われたことをやるのが仕事」
という前提が、知らず知らずのうちに組織の中につくられていきます。
そして、その構造の中にいる人たちは、一生懸命であればあるほど、指示されたことを確実にやろうとするようになります。
それを見た上司は、「もっと主体性を持ってほしい」「自分で考えて行動してほしい」と思うかもしれません。
しかし、本当にその人に主体性がないのでしょうか。
「主体性のない社員がいる」のではなく、その人の主体性が発揮されにくい構造になっているのかもしれません。
だとしたら、人を変えようとするだけでなく、構造を変えるという選択肢が見えてきます。
あなたの所属する組織の構造が「上から言われたことをやるのが仕事」から「理念を実現することが仕事」に変わったと想像してみてください。
図書館や高級レストランに入った時のように、そこにいる人たちの振る舞いは、どのように変わるでしょうか。
仕事に対する前提が変われば、組織の中で交わされる問いが変わります。
問いが変われば、ものの見方、考え方、行動も変わっていきます。
私は、人には充分に発揮している能力と、まだ充分に発揮していない能力があると思っています。
ある能力が低く見えるのは、その人にその能力がないからではなく、その能力を発揮する「間」にいる機会が、これまで少なかっただけなのかもしれません。
だとしたら、人を変えようとするよりも、その人がまだ充分に発揮していない能力を存分に発揮できる「間」をつくる。
そんな組織をつくることが、成果を生み出す近道なのではないでしょうか。
人を変える前に、その人がどんな「間」の中にいるのかを見てみる。
あなたの組織では、どのような構造が、人の振る舞いを生み出しているでしょうか。
まずは、自分たちがどんな水の中にいるのかに気づくこと。
組織を変える第一歩は、そこから始まるのだと思います。