理念実現に向かう組織は、たったひとつの”場”から生まれる
前回のコラムでは、多くの組織が知らず知らずのうちに「 上から言われたことをやるのが仕事」という定義の中で動いていることをお伝えしました。
その定義のもとでは、どれほど一生懸命に働いていても、組織は 受け身のサイクル」に入りやすくなります。
①指示が出る
②期待以上の成果を出そうとする/少なくとも指示通りにやろうとする
③結果が出ることもあれば、出ないこともある
④結果が出ると評価が上がる、結果が出ないと評価が下がる
⑤ますます指示通りにやろうとする
⑥そこに指示が出る(①に戻る)
この循環の中で、人は自然と「 上から言われたことをやるのが仕事」という罠に陥っていきます。一方で、理念が生きている組織では、仕事の定義が違います。「 理念を実現することが仕事」という定義です。もし仕事の定義がこちらであれば、全ての仕事が「 理念をどう実現するか」という問いの中で考えられるようになります。
理念実現が仕事になるために大切なもの
では、そのような組織はどのようにして生まれるのでしょうか。
理念は、掲げただけでは動き始めません。理念を掲げ、それを説明する。朝礼で唱和する。理念を書いた冊子を配る。社員が理念を暗記する。こうした取り組みをしている企業も多いことでしょう。しかし、仕事の仕方が変わるかというと、そう簡単ではありません。理念が言葉として共有されても、それが日々の仕事の判断基準になるとは限らないからです。理念実現が仕事になるために大切なもの、それは場です。
理念は、言葉として伝えられるだけでは、人の仕事にはなりません。人と人が向き合い、問いをもとに語り合い、共に取り組む中で、自分の仕事へと翻訳されていくのです。ところが、多くの会社は、そのような場が日常にありません。
理念を語る「場」が組織を変える
会議を例にとってみても、
・報告をする場
・数字を確認する場
・指示を出す場
になっていることが多いのではないでしょうか。
もちろん、それらは組織を運営する上で必要なことです。しかし、その場では理念はどこか遠くに置き忘れられてしまっています。理念で数字を創ることができないという思い込みや、理念の話をした時点で、社員が数字から逃げてしまうという恐れがあるからとも言えます。
では、想像してみてください、あなたの組織に理念を基準に日常業務を話し合う場があったとしたら・・・
どんな場になるでしょう。
そのような場では、むしろ最初に少し戸惑うような静けさが生まれることがあります。
普段の会議では、報告があり、数字が示され、対策を決めていきます。
しかし、理念を基準に日常業務を話し合うと、一度立ち止まり、それぞれが自分の仕事を見つめ直す時間が流れ始めるのです。
「理念を実現しているとはどういう状態なのか」
「そのとき、お客様は、市場は、どのようになっているのか」
このような問いを探求すると、多くのメンバーはワクワクしてきます。理念を実現している状態とは、自分たちの仕事が「誰か」あるいは「何か」の役に立っている状態だからです。
世の中に、役に立たない仕事はひとつもありません。ですから、理念を実現している状態を明確にすることで、自分たちが役に立っているという仕事に対する誇りを取り戻すことができるのです。
当事者意識が理念を仕事に変える
とはいえ、現実はうまくいかないことばかりです。
例えば、
・人手不足
・スキル不足
・情報共有不足
・コミュニケーション不足
多くの組織で、こうした問題はすでに知られています。同時に、多くの人たちは、これらの問題を 「誰かが」解決してくれると思っています。 「会社が」 「あの役職の人が」「あの部署が」というように。だから、解決しないのです。
もし、あなたが以下の言葉を自問自答したらどうなるでしょう。
これらのことを超えて理念実現の状態を創るために『私は』何をするのか」
もしこの問いを向けられたら、あなたはどんな答えを思い浮かべるでしょうか。
この問いには、正解はありません。「ただ、それまで 会社の問題」として見えていたものが、 自分はこの状況にどう関わっているのだろうか」という視点で見え始めることがあるのです。
これは、誰かを責めるための問いではありません。むしろ、自分自身を責任の外側に置いてしまっていた思い込みに気づくきっかけになる問いです。そして、そのことに少しでも気づいたとき、いままで閉ざしていた当事者意識のふたが開くのです。
そして、この気づきが、ひとりではなく、あなたの部署や組織で起きたとしたら・・・
理念は掲げただけでは実現しません。理念を基準に語り合う「場」の中で、一人ひとりが理念実現の担い手になっていくのです。その繰り返しによって、理念実現が仕事になっていきます。そのために、あなたがまず取り組めることは何なのだろう・・・
