医療現場をチームで守る意味
義⺟が⼊院している病院へお⾒舞いに⾏った。
医療療養型の病院のため、急性期や救急患者が搬⼊される慌ただしさはなく、院内は
いつも静かだ。
だが、院内の雰囲気は明るく、温かい。
すれ違う看護師さん、介護⼠さんがにこやかに挨拶される。お辞儀の⾓度も深い。
たまたまエレベーターに乗り合わせた他のご家族が「本当によくしてくれている」と
穏やかに会話されている姿を⾒て、その通りだなと感じた。
Index
医療現場を守るとは何か
私⾃⾝、以前製薬会社に勤めていた。医療を外側から⽀える⽴場として、医師や医療従事者と関わる機会も多かった。薬が研究開発から患者さんに届けられるまでの流れを、仕事を通じて間近で⾒てきた経験がある。
最近、医療に関する話題が気になっている。
年齢を重ねるにつれ、医療を「⽀える側」のことを考える時間が増えた。
医療費は⻑期的に増加傾向にある。収⼊が診療報酬によってほぼ規定されるなかで、⼈件費や物価は上昇を続け、病院経営は厳しさを増している。地⽅や特定の診療科では⼈材確保が難しく、医療を続ける負担が現場に重くのしかかっている。
医療現場を守るとは、何を意味するのだろうか。設備や制度を整えることだけでは⾜りない。個々の献⾝に頼り続けることでもない。医療を⽀える⼈たちが、チームとして⽴ち続けられるかどうか。問いの核⼼は、そこにあるように思う。
チームで立ち続ける力
医療の現場は、多職種が関わる⾼度なチームワークによって成り⽴っている。医師、看護師、技師、事務職など、それぞれが専⾨性を持ちながら同じ患者を前に判断し、連携し、決断していく。忙しさや⽴場の違いから、思いや意図がすれ違う場⾯も⽣まれる。
チームコーチングが役に⽴つのは、こうした場⾯だ。
いくつかの病院でチームコーチングをさせて頂いた。チームとしての⽬的や価値観を⾔葉にし、違いを理解しながら、次の⼀歩をともに考えるためのプロセスを共有する。医療従事者としての志が蘇り、関係性や患者さんへの向き合い⽅にも変化が⽣まれる。
医療の質や安全性は、個々の技量だけで決まるものではない。関係性や意思疎通の質が、判断の精度や持続性に影響を与える。現場で交わされる何気ない⼀⾔や、短い確認の積み重ねが判断の拠り所になっている。
⽇々の診療やケアの現場で迷いながら、悩みながらも判断を重ねている医療従事者がいる。⼀つひとつの判断の積み重ねによって、私たちの⽇常は静かに⽀えられている。そんな医療に関わる⼈たちの営みに、敬意と感謝を覚える。
医療現場を守るとは、誰かが無理をし続けることではない。チームとして、持続可能なかたちで⼒を発揮できる状態を整えることだ。
チームで⽴ち続ける⼒を、どのように育てていくのか。多くの組織で、静かに問われているテーマだと感じている。
