基本とは何かを、今一度考えてみる
「今やかの三つの塁に人満ちて そぞろに胸の打ち騒ぐかな」
――野球好きで知られる歌人・正岡子規の短歌である。
球児たちの姿に心を打たれる理由
今年も球児たちの夏がやってきた。
三冠王を3度獲得した落合博満氏は、高校野球のメリットとして「目標が明確であり、全員がその目標に集中する経験ができること」を挙げている。 選手・指導者・父兄・関係者が一丸となり、純粋に目標に向かうその姿こそが、観る者を惹きつける大きな力になっているのだろう。
「キャッチボールの中に教えあり」基本に立ち返る心
野球とは直接関係ないのだが、甲子園大会期間中には「終戦記念日」が訪れる。
1963年の第45回記念大会以降、毎年8月15日正午には、30秒間のサイレンが甲子園に鳴り響き、身の引き締まるような静寂が訪れる。 戦没者への追悼とともに、「平和への感謝」を再確認する一瞬である。
私には、戦争と野球を結びつけて強く印象に残る、ある指導者との出会いがあった。
大学4回生のとき、他大学のOBでありながらコーチとしてやってきたその方は、小柄で温厚な“お爺ちゃん”だった。 小さい体ながら大学時代はエースとして活躍し、太平洋戦争では特攻隊員として出撃を待っていたという。
当時、特攻隊の中には野球チームがあり、部隊対抗で試合をしていたそうだ。 その方は、もちろん特攻隊チームでもエース。だからこそ、上司である監督が命令を下せずにいるうちに、終戦を迎えたという。
「私の命は、野球にいただいたもの。野球を通して恩返しをするのが、私の人生です」
その言葉に、話の真偽を超えて、在り方そのものに心が震えたことを今も鮮明に記憶に残っている。
亡くなる年にいただいた最後の年賀状には、こう書かれていた。
「キャッチボールのその中に 教えのあること 今にして知り」
キャッチボール――野球の基本中の基本。 80歳を超えてなお、「基本」の中に学びを見出し、さらに成長しようとするその姿勢に、私は心を打たれた。
私も還暦を過ぎて、キャッチボールの中に、野球だけでなく、人間関係や仕事への取り組みなどの学びがあることをほんの少し理解できるようになってきた気がしている。
理念を軸に一枚岩のチームを目指す
では、仕事における「基本」とは何だろうか?私はこう考えている。
「理念の実現」
全社員が一枚岩のチームとなり、純粋に理念の実現に向けて、ひたむきに張り切る。 その姿に、クライアントや社会が影響され、応援してくれることで、はじめて成果が生まれるのだと思う。
甲子園で優勝できるのは、わずか1チーム。
しかし社会では、それぞれの場所で多くの“優勝”が可能だ。
今の日本を築いてくれた多くの御霊に感謝し、純粋に白球を追い続ける球児たちに声援を送りながら、 もう一度、自分たちが「理念に向かって一枚岩のチーム」になっているかを見つめ直す―― そんな夏を過ごしてみるのはいかがだろうか。
