組織能力が成長するとは
経験から学び進化する個人の力
大谷翔平選手は2024年のワールドシリーズで左肩を負傷(脱臼)したことから、2025年シーズンのスライディングに関して、従来の右足スライディングから左手を地面につけない(左手を腰の後ろに置くケースもある)新しいスライディングに進化させています。このことにより、左肩への負担を大幅に軽減しつつ、速さを維持して実践での盗塁成功につなげています。
私たちが何かの分野で成長を試みるとき、まずは「経験」や「体験」を振り返ることからスタートします。大谷選手であれば2024年の負傷した場面をコーチと共に振り返ったことでしょう。経験や体験を振り返り、「内省」します。走塁やスライディングについて、うまくいっていることは何か、うまくいっていないことは何か、どのような改善をすればケガすることなく、そして速くベースにたどり着けるかなど、走塁コーチと話しながら、いくつかのオプションを考えたことでしょう。
そして振り返ったこと、内省を踏まえて、次はどのようにしていったらいいのかを導き出していくのが「概念化」や「持論化」というプロセスです。ここで、地面に手をつかない新しいスライディングという答えを導き出したはずです。そしてこのスライディングを、2025年シーズン前に「試行」「実践」しました。
内省を通じて本質に気づく
ある組織での振り返りでの出来事です。2ヶ月前に立てた目標とアクションプランをメンバー全員で振り返っていきました。そして客観的に、建設的批評家としてこの2ヶ月間の結果にコメントしてもらいました。このコメントに対して、「何かに気づけと言われているとしたら、何に気づけと言われているか?」という問いに答えてもらいました。
そうすると、いくつかの答えの中の「もっと本気になる」という1枚のポストイットカードにメンバーの注目が集まりました。そしてもう一つ問いを出してみたのです。「本気の対象は何ですか?何に本気になる、ということなのでしょうか?」と。
目標達成やアクションプランをやりきることなど、いくつかの答えが出たあとに、「ミッションを生き、ビジョンの実現に本気になるという案はどうでしょうか?」と別の答えを振ってみました。この一連のプロセスの中では「何に本気になるのか?」の答えは目標達成ややりきることになるかもしれませんが、もっと本質的な要因は何かを突き詰めるならば、それは別のところにあるはずです。
ミッションを生き、ビジョンを実現することが日常の仕事に落とし込まれていたら、メンバーの意識がそこにあったら、決めた目標の達成やそのためにやりきることは容易だったはずです。メンバーは全員でつくったミッション、ビジョンを管理職者にも腹落ちして日々の仕事に生かしてもらいたいと動いていますが、自分たちが生かしていない現実を見て、我々は何のために誰のために事業を行っているのかの原点に返り、再びスタートすることになりました。
ビジョンが組織を動かす
もう一つの組織で、7ヶ月間で経営リーダーチームをつくるという取り組みが終わりました。7ヶ月の期間を通して経験学習モデルをまわしながら最終回を迎え、これまでの取り組みをまとめて、社長と専務に報告したときのことです。専務から、この取り組みを彼らが自主的に行っていくことを希望する旨の発言がありました。この取り組みは社長に代わって経営を行っていく経営リーダーチームをつくることが目的で実施してきましたので、専務に正式に承認されたことになります。
そして社長は、彼らがつくったビジョンを自ら読みながら、感極まって言葉に詰まり涙をこぼされました。このビジョンを口にしながら味わって、ビジョンが実現した景色を観て、何を思ったのでしょうか。経営リーダーチームの経営によってこの会社がどのような世界を実現するのかについて確かに思い描けたとしたら、バトンを渡すことになるでしょう。
