松下幸之助の提言『“大番頭国家日本”をめざす』から思うこと
先日、「PHPビジネスコーチ養成講座」を担当するためにPHP研究所の京都本社を訪れた時のことです。
講座を行う2階の研修ルームに隣接しているロビーにPHP研究所の設立以来の歩みが紹介されています。そこに展示されている松下幸之助氏の書かれた原稿や出版物の中から月刊誌『Voice』1984年1月号の「二十一世紀日本への提言」として掲載された「“大番頭国家日本”をめざす」が目に留まりました。
世界のトップリーダーではなく二番手、あるいは二番手集団の中にいることを前提としている提言であるということがタイトルから分かり、興味を持ちました。実は1984年、私はリアルタイムでこの提言を読んでいましたが、松下幸之助氏が世界の中での日本の役割を深く認識されていたのだということに当時は気づきませんでした。
松下幸之助が示した「世界の大番頭」としての日本の道
1980年には世界のGDPの10%、世界貿易の7.3%を占めるまでに発展し、二度にわたる石油危機も克服し、世界第二位の経済力を持つに至った日本は、自国だけの利害で動くことはもはや許されず、リーダー国であるアメリカを支える先進諸国の一員として、世界全体のことを考え、行動しなければならないと言っています。
当時は敗戦から39年、日本が軍事小国であることを選んだこともあり、経済大国として奇跡の復興を果たした日本ではあるけれど、この先、覇権国を目指すのは間違っているという前提のもとに、世界の大番頭としての役割を担う立場になるべきだと提言しています。時間を巻き戻すことができるのであれば、この提言を日本の大方針としてやり直したい気持ちにかられます。
「大番頭」の影響力と現代企業への示唆
ところで「大番頭」という表現を耳にすることがほとんどなくなってきたということにも気づきました。
かつては丁稚から始まり手代へ、さらにさまざまな苦労を経て番頭に昇格していきます。何人かの番頭の中から特に見識も高く、店の主人や身内だけではなく、お客様からの信望が厚い人物が大番頭になったわけです。主人の意図するところを察したうえで、店のすべてを取り仕切るという大役を担っていました。ときには主人の間違った決断や振る舞いを正す役割も演じることもあったでしょう。主人の補佐役である大番頭の存在は店の発展を左右するほどの影響力を持っていたともいえるのです。
民間企業は同族経営がほとんどであり、大企業であっても創業一族が経営権を持っているファミリービジネスが数多く存在しています。有能な人物を他社から招くことも大事ではありますが長年、会社の発展の貢献してくれている社員の中から、ときにはオーナーに対して厳しい提言をするような大番頭になる人物を見抜き、育て、信頼し、任せていくと決めたら、どのような目線で社員たちを見ることになるでしょうか。
