二項対立か二項動態か
あなたが営業部署のマネジャーで、人員を減らして売上は伸ばすように言われたらどんな気持ちになるでしょう?
若い頃の私だったら、人を減らして売上を伸ばせってどういうこと?現場をわかってないからそんなことを平気で言えるんだよと、口を尖らせたことでしょう。人員削減を取るのか、売上アップを取るのか、どちらかにしてくれ!心の中でそんなふうに叫んでいたかもしれません。
「あれかこれか」から「あれもこれも」へ
でも、世の中をよく見てみると、人を減らして売上を伸ばしたという事例は実際にはいくつもあるのではないでしょうか。
私の前職のキリンビールでも、「キリンビール高知支店の奇跡」を著した田村潤氏が中部圏統括本部長時代に人を減らして売上を伸ばしたり、副社長営業本部長の時には、拡売費を減らして売上を伸ばしたりという離れ業を成し遂げていらっしゃいます。その田村氏と何度も対談したことのある野中郁次郎氏は著書「二項動態経営」の中で以下のように述べています。
「経営活動において直面するさまざまな矛盾やジレンマを「あれかこれか」の二項対立(dichotomy)で切り抜けるのではなく、苦しくても「あれもこれも」の二項動態(dynamic duality)を実践し、新たな価値を創造することこそが、過去の自己を超えていくただ一つの道なのである。(”はじめに”から引用)」
では、いったいどのようにしたら 「あれかこれか」を「あれもこれも」にすることができるのでしょうか。その重要な答えの一つは、「視座を上げる」ことです。アインシュタインは「いかなる問題もそれが発生したのと同じ次元で解決することはできない」という名言を残していますが、その言葉を信じて実行するということです。
経営理念が、ジレンマを突破口に変える
組織で最も高い視座にあるのは経営理念です。新幹線の窓からみる景色と飛行機の窓からみる景色が全く違うように、今までの仕事の進め方という次元だと「あれかこれか」しか見えなかった問題も、経営理念を実現するという次元からみることで 「あれもこれも」を実現する突破口が見えてくるのです。
つまり、今までの仕事の進め方という次元では、人員削減は売上アップの制約条件になりますが、理念を実現するという次元からみると、人員削減は越えていけばよい条件にすぎなくなります。
ですから、「人を減らして売上アップなんてできるわけないだろ!」という愚痴を、「人員を減らして売上を上げるためにはどうすればよいのだろう?」という問いに変えることが可能になるのです。その問いの答えを見つけるのは決して楽ではないでしょうが、その答えが組織にとって新たな価値となり、人と組織が過去の自分を超え、真の変革を実現する道を拓くことは間違いないでしょう。
そして、どちらの道を選ぶかが優れたリーダーになるかどうかの分かれ道だとしたら、あなたはどちらを選ぶでしょうか。
